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カニ織の起源とその危機|失われそうなカシミールの芸術(KANI Weaving)

カニ織の起源とその危機|失われそうなカシミールの芸術(KANI Weaving)

カシミールの芸術 カニ織(KANI Weaving)の素晴らしさ

カシミールに古くから伝わる世界有数の織物、カニ織(KANI Weaving)
カニ織のその素晴らしい、まるで絵画のような繊細さと大胆さをあわせ持つそのデザインは中世のヨーロッパにおいても、そして現代も、カシミヤショールを愛する世界中の人たちを魅了してきました。

カニ織が素晴らしいのはそのデザインだけではありません。
カニ織は、世界有数の品質を誇るラダック地方のカシミヤ山羊の毛を使っているため、織物としても非常に柔らかく、そして軽さも併せ持ち、暖かいく、しかも絵画のような美しいデザインなのです。

たとえば通常の羊毛ウールだと首元に巻いたら極寒のエスキモーのようないで立ちになるショールサイズ(横2m×縦1m)の巻き物であったとしても、カシミヤ/パシュミナショールのカニ織だと首元で決して膨らまず、スタイリッシュに魅せるそのスマートさ。

アラブや中東の方たちのようにカシミヤ/パシュミナショールを体に巻く使い方ではなく、欧米の人たちのようにカシミヤ/パシュミナショールを首に巻くことが多い日本人のわたしたちの使い方にも、カニ織(KANI Weaving)はぴったりと合うのです。

このようにカニ織は世界でもトップクラスの人気を誇る織物ですが、そのカニ織の織り方が、日本の西陣織の綴(つづれ)織に似ていることはよく知られています。
ちなみに、通常のカシミールのカシミヤ/パシュミナの織り方も使用している織機も結城紬(ゆうきつむぎ)の織り方に非常に似ているのです。

このコンテンツでは、その素晴らしいカシミールのカニ織(KANI Weaving)の発祥と綴(つづれ)織との関係。
そしてカニ織(KANI Weaving)の今とカニ織に生じているその危機について特集してみたいと思います。

カニ織(KANI Weaving)と綴(つづれ)織の類似点

綴(つづれ)織
Ⓒ石川つづれ(株)

綴(つづれ)織とは、正式名称を「西陣爪掻本綴織(つめがきほんつづれおり)」といい、日本美術織物の最高峰と呼ばれています。

綴(つづれ)織は、綴機(つづればた)と呼ばれる人の手足のみで操作する織機を使用し、爪掻(つめがき)という日本に伝わる伝統的な技法でその文様を織り上げる織り方で、綴(つづれ)織は、爪で織る芸術品と呼ばれています。

そしてこの綴(つづれ)織には計算された型紙のような図案はなく、色・形などデザインすべては職人の感性と技術に委ねられます。

そしてその職人の豊かな感性と高度な技術、さらには経験すべてがその綴(つづれ)織に注ぎ込まれるため、でき上った綴(つづれ)織は世界にひとつだけの作品になります。
まさに日本が世界に誇る芸術が綴(つづれ)織といえます。

たしかにこう考えてみると、カニ織と綴(つづ)れ織りは非常に似ています。
違いは、カニ織はカニというカシミヤ糸を巻き付けた小さなボビンを使い織っていきますが、この綴(つづれ)は職人の爪を使って織っていくという点だけのような気がします。(綴(つづれ)織の専門家ではありませんので、他にも相違点があるかもしれません)

では、このカニ織との相違点が多い綴(つづれ)織には、どのような起源があると言われているのでしょうか。
カニ織の起源を追うために、まず綴(つづれ)織の起源から追っていきたいと思います。

綴(つづれ)織の起源とは

この綴(つづれ)織の起源はエジプトという説と古代バビロニアという2つの説があるようです。
いずれにしても綴(つづれ)織の起源は海外の中東の方であるということです。

とくに綴(つづれ)織の起源説の中でもエジプト説が有力なようで、紀元前15世紀のエジプトの王墓から綴(つづれ)織に似た衣類などが見つかっているそうです。

そのエジプトではもちろん、綴(つづれ)織とは言わず『コプト織』と云われています。

そのコプト織は優れた織物の価値ゆえ、その後世界各地に広がっていき、ヨーロッパへ伝わったものがゴブラン織りと呼ばれています。
その逆の方向、つまり東洋へはシルクロードを通して伝わっていき、この日本にも伝わり、綴(つづれ)織となったと言われています。

そしてそのシルクロード沿いには、たしかにコプト織が伝わった形跡が今もなお色濃く残っています。
たとえばペルシャ絨毯やトルコの毛織物のキリム織、そして中国の刻糸(こくし)織り、明綴(つづ)れなど、コプト織に似た織り方で作られている織物が今もなおシルクロード沿いの各地に残っているのです。

このコプト織も東洋に伝わるころには、綴(つづれ)織の元と言われるコプト織に比べ、時代や伝えられた土地によってさまざま変化していったようです。
たとえば用いる糸も、西方の毛糸から東洋の絹糸へと変わり、織る技術も発展して東洋独自の綴(つづれ)織が完成していきました。

ちなみにこの綴(つづれ)織の日本への伝来は飛鳥時代だと言われています。
つまり綴(つづれ)織は、遣隋使や遣唐使によって隋・唐の織製品と共に帰化人が持ち帰った織物の技術であると考えられています。

このように綴(つづれ)織は、エジプトを発祥の地としてユーラシア大陸を横断し、東の果てであるこの日本に伝えられたのです。

カシミールで伝えられるカニ織(KANI Weaving)の起源とは

カニ織(KANI Weaving)
カシミールのカニ織(KANI Weaving)

ではカニ織(KANI Weaving)の起源はなんでしょうか。

カニ織が作られているカシミールでは、その起源についてどのように言われているのでしょうか。

カシミールの伝承によるとカシミールのショールは、西暦前2世紀又は3世紀に作られていたと考えられています。

カシミールのカシミヤ/パシュミナの起源を辿った一部の学者は、西暦前のヴェーダ時代(1500-500 BCE)にショールである可能性のある商品が書かれている文献の記述を見つけました。
※西暦前のカシミールに関してご興味のある方はカシミールの歴史 紀元前まで|カシミールを想うをお読みください。

また明確ではありませんが、ヒンドゥー教の文献の中でクリシュナが他の地を訪ねた際のお土産にカシミヤ/パシュミナらしきものを持参したらしいことが書かれています。
これも西暦前3-5世紀くらいの言い伝えです。
しかしこれがカシミヤ/パシュミナらしいことは分かってはいても、カニ織かどうかは定かではありません。

その後のカシミールのカシミヤ/パシュミナに関する記述は西暦10世紀まで遡ってしまいます。
※カシミールがカシミヤ/パシュミナに出会うまでに明らかになっている歴史に関してご興味のある方はカシミールの歴史 紀元後~パシュミナとの出会いまで|カシミールを想うをお読みください。

これらが文献や現地で聞いて調べたカシミールでのカニ織(KANI Weaving)に関する起源です。
つまりカニ織(KANI Weaving)の発祥に関して、カシミールの文献では明確に分かっていないということになります。

しかし、このように前述した綴(つづれ)織の起源。
つまり西暦前15世紀くらいにエジプトから徐々に広がっていき、それがシルクロードを伝わっていったこと。
そしてそのコプト織がペルシャにも伝わった明らかな痕跡があり、カシミールのカシミヤ/パシュミナはペルシャから伝えられた可能性が非常に高いことを考えると、カニ織(KANI Weaving)の起源も綴(つづれ)織と同じく、エジプトのコプト織が起源である可能性が非常に高いといえます。

そしてカニ織(KANI Weaving)はシルクロードを通し伝わっていく過程で、中国・日本などの東洋では糸が絹に変わったように、カシミールではカシミヤ/パシュミナ糸に変わり、小さなカニと呼ばれるボビンを使い、カシミール独自の織物、カニ織(KANI Weaving)となっていったと考えるのは道理にあった考えのように思えます。

つまりカニ織(KANI Weaving)の発祥は、もしかしたら日本の綴(つづれ)織のようにシルクロードによって、カシミールにもたらされ、日本の綴(つづれ)織のように、その土地独自の発展を遂げていったと考えるのが道理にかなった結論なのかもしれません。

ちなみに、カシミールのビジネスパートナーもこれらカシミールの織物や刺繍などに関して、非常に勉強をしており詳しいのですが、今回スリナガルに行った時(2019/10)、このカニ織の起源について話し合いました。

そしてカニ織の起源はカシミールの文献には明確な記載はないが、エジプトの『コプト織』ではないか?!
なぜならばペルシャの織物の起源もコプト織だと言われてると質問したら、『恐らくそうだ。わたしもそう思っている』と言っていました。

これらの事柄も調査が待たれる分野です。

カシミールの財産 カニ織(KANI Weaving)の現在とその危機

偽物のカニ織(KANI Weaving)の登場!

カニ織(KANI Weaving)

日本には、百聞は一見に如かずということわざがあります。
ぜひ左の画像をご覧ください。
これはカニ織(KANI Weaving)をアップで撮影した写真です。

この写真を見ただけで分かると思いますが、カシミールのカニ織(KANI Weaving)は非常に柔らかく、しかも軽く、見た目もまるで絵画のように素晴らしいカシミールが世界に誇る織物ですが、その繊細な素晴らしさゆえにカニ織を作るのには非常に時間がかかることで有名です。

早くても半年~8カ月。
デザインによっては1年以上かかることもままあります。

そのためかカニ織(KANI Weaving)も非常に高くなってしまい、日本でも高価な価格で売られています。

Great Artisan(グレートアーティザン)では、より多くの人にカニ織(KANI Weaving)を楽しんでいただきたいと思っていますので、適正価格で販売しておりますが、本物のカニ織(KANI Weaving)のジャマワールデザイン(カニ織全体に柄があるもの)を購入しようと思ったら、この日本ではほぼ40万円以下では買えないのが現状です。

ちなみに同じカニ織(KANI Weaving)でもショール両端にだけカニ織のデザインが施してあるカニ パルダール(Paldar)ですともっとお安く購入することができます。

このように世界的に人気があり、芸術性も高いカニ織に目を付けたのが偽物販売業者です。
カニ織の偽物を作り、最初はインド・パキスタンなどで、その後世界中で販売をいたしました。

そのような状態を踏まえ政府は、カニ織(KANI Weaving)はインドの財産ともいえる織物芸術のため、2008年にGI(Geographical Indication)認定がされました。
このGI(Geographical Indication)認定とは、いわゆる地域ブランドのようなもので、インド独自の織物であるカニ織(KANI Weaving)を保護するために、スリナガル近郊の町カニハマ村の伝統的な技法で作られたものをカニ織(KANI Weaving)と呼び、インド政府としてカニ織(KANI Weaving)を保護し、信頼性を維持していこうという試みがされています。

これによって以前よりはカニ織(KANI Weaving)の信頼性が上がったのですが、未だにカニ織(KANI Weaving)の偽物は世界中に蔓延っているのも現実です。

ちなみにこの日本にも、カニ織の偽物は入ってきています。
あたかも本物のカニ織のような名と表現でWEBサイトに掲載され、2-3万円くらいで売られています。
素材はパシュミナと書かれています。
ちなみにパシュミナという素材表記は日本では認められていない素材表記です。

ちなみにGreat Artisan(グレート アーティザン)では本物のカニ織(KANI Weaving)と明らかに違いが分かるため、「Kani Pattern カニ織デザイン」と記載し、素材も「メリノウール」と記載させていただいています。

なぜなら本物のカニ織(KANI Weaving)はカニハマ村近郊で織られており、ラダック製のカシミヤ/パシュミナ糸を使っていることが条件だからです。

偽物のカニ織(KANI Weaving)の正体!

カニ織(KANI Weaving)

ではその偽物のカニ織(KANI Weaving)の正体は何でしょうか。

それはウールを使って、機械で織られたカニ織(KANI Weaving)です。
ウールとはメリノウールです。

これらの偽物のカニ織(KANI Weaving)を販売している人は、機械で織ったカニ織(KANI Weaving)ともいわず、ときに手織りのカニ織(KANI Weaving)のように販売したり、パシュミナ カニ織(KANI Weaving)という商品名をつけて、あたかも本物のカニ織(KANI Weaving)のように見せて、偽物のカニ織(KANI Weaving)を世界中で販売しているのです。

その結果はカニ織(KANI Weaving)のブランドの価値が落ちています。
本物のカニ織(KANI Weaving)は素晴らしい織物です。

しかし偽物のカニ織(KANI Weaving)はウールで機械織りなので、そこらへんのウールのマフラーと変わりません。
これを本物のカニ織(KANI Weaving)だと思って買った人はがっかりします。
まさにカニ織(KANI Weaving)のブランド力の失墜です。

また偽物のカニ織(KANI Weaving)は安いので売れます。
そうするとカニ織(KANI Weaving)を織っている職人たちの賃金も上がらず、仕事も少なくなります。
そうなるとカシミールの若者たちがカニ織(KANI Weaving)を織る仕事を選ばなくなっています。
そのためカニ織(KANI Weaving)の職人が少なくなっているのです。
それによってカニ織(KANI Weaving)がさらに貴重で高価なものになっています。
悪循環を生んでいます。

またこれらの事実は、カシミールのカシミヤ/パシュミナの後継者がいないということにも繋がっているので、素晴らしいインドの芸術の消失にも関係してくるのです。

これが現代生じているカニ織の危機なのです!

わたしの現地の友人はカニ織(KANI Weaving)を含むカシミールのカシミヤ/パシュミナを世界中の人々に知ってもらいたいという高い志しを持ち仕事をしているため、Great Artisan(グレートアーティザン)にも安くカシミールのカシミヤ/パシュミナもカニ織も卸してくれています。

ですから他店に比べGreat Artisan(グレートアーティザン)では本物の手織りのカシミールのカシミヤ/パシュミナをお安く提供できています。

そんな思いを持っている彼からいうと、これらカニ織の現状はとても辛いことのようで、先日この機械の台頭:カシミールの織工は彼らの将来を恐れているという記事を送ってきてくれました。

ぜひご興味のあるかたはご覧ください。

カニ織り(KANI Weaving)の発祥とその危機 まとめ

ジョセフィーヌ
ナポレオンの妻のジョセフィーヌ

カシミールのカニ織り(KANI Weaving)に関して特集いたしました。

ぜひカニ織り(KANI Weaving)に関しては、当社コンテンツカニ織り(KANI Weaving)の真実|カシミヤ/パシュミナの王様も合わせてお読みいただければ、カニ織り(KANI Weaving)に関してもっと知っていただけると思います。

これらコンテンツでカニ織り(KANI Weaving)のことを再三に渡ってお伝えしているように、カニ織り(KANI Weaving)はカシミールが世界に誇る素晴らしい織物です。

ぜひ一度身に纏ってください。
お触りください。
手に入れてみてください。

きっと中世のヨーロッパ社交界にカシミールのカシミヤ/パシュミナ。
ことにカニ織り(KANI Weaving)を広めた、ナポレオンの妻のジョセフィーヌのようにカニ織り(KANI Weaving)の虜となって、カニ織り(KANI Weaving)の擁護者、伝道者となることと思います。

Great Artisan(グレートアーティザン)もカニ織り(KANI Weaving)の販売をしております。
WEBサイトで調べてみてください。

わたしたちのビジネスパートナーはカニ織の工房を抱えています。
それについては【初公開】カシミールのパシュミナファミリーの組織・仕事分担を教えますをご覧ください。
腕のよい職人を多く抱えていますので、通常のカニ織 ショールだけでなくカニ織のストールやオリジナルのカニ織なども作っています。
ぜひ当店のカニ織をご覧ください。

またGreat Artisan(グレートアーティザン)のカニ織り(KANI Weaving)が本物のカニ織り(KANI Weaving)であり、しかも適正価格で販売していることが分かると思います。

誤解がないようお伝えしたいと思います。
Great Artisan(グレートアーティザン)のカシミールのカシミヤ/パシュミナの価格は安いのではなく、適正価格なのです。

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