パシュミナは、繊維の宝石として、世界中の人々から愛されています。
海外のWEBサイトを見てもパシュミナという名前はよく出てきますし、ネパールやタイ、シンガポールや香港、そしてインドや中東の国々などに観光で訪れた際にも「パシュミナ」という言葉をよく目にします。
しかし世界では高級品として有名なパシュミナも、この日本では理解が曖昧です。
日本でパシュミナとは、人によっては薄くて柔らかいストール、海外で買ってきた人、お土産で貰った人はパシュミナとは、ただ暖かそうなストールくらいにしか認識がないかもしれません。
さらにパシュミナとは偽物という人もいます。
今回はそのように評価の分かれるパシュミナに関して特集したいと思います。
Contents
パシュミナとは?
パシュミナ(Pashmina)とは、北インドのカシミール地方に古くから伝わる独自の手織り技術を使い織られた毛織物のことをパシュミナ(Pashmina)といいます。
パシュミナ(Pashmina)に使われている素材(獣毛)は、約4,000メートル級のヒマラヤ高山地帯(ラダック)で飼育されているヒマラヤ山羊の冬の間だけ生える内側の柔らかい毛だけをその素材として使います。
そのパシュミナ(Pashmina)独自の製造過程は20にも渡り、それらすべての条件を満たしているストールやショールだけを、カシミール地方ではパシュミナ(Pashmina)と呼んでいます。
パシュミナ(Pashmina)は、世界的に高級ウールとして有名で、非常に繊細で肌触りが良く、軽く、その優れた保温性ゆえにパシュミナは人気があります。
しかも本物のパシュミナ(Pashmina)は、生地に光沢があり、その生地になんとも表現できないぬめりを感じます。
ですからカシミールの本物のパシュミナ(Pashmina)は、素晴らしい質感の希少な繊維として、世界中の人々から愛されているのです。
それはパシュミナを使ったものだけが理解することができる大変素晴らしい体験です。
しかしこのような本物のカシミール産のパシュミナは、この日本ではほとんど流通していないのが現状です。
しかも本場のインドでもカシミールから直接の仕入れルートを持っている人が少ないのもカシミール産のパシュミナの特徴でもあります。
ですからインドのニューデリーのお店でパシュミナを買っても、思っていたよりも高いと思われた方はいらっしゃるのではないでしょうか。
そのためこの日本では、カシミール産のパシュミナの流通量が少ないこともあり、カシミールで作られたパシュミナだというストールやショールを購入する際には細心の注意が必要です。
リングショールとはなんですか?
よく本物パシュミナは指輪を通り抜けるほど滑らかなものだと仰る方がいらっしゃいます。
それはある意味正しくもあり、間違っている情報でもあります。
たしかに昔そのように呼ばれたパシュミナはありました。
それはインドカシミール地方特産の「シャトゥーシュ」という織物のことです。
このシャトゥーシュとは、チベット高原の4000~5000mの高地に生息するといわれる、野生のチベットカモシカのチルー(チベットアンテロープ)という動物の下毛を使って織るショールのことです。
チルー(チベットアンテロープ)という野生のチベットカモシカは、チベット高原を中心に,インドの北部にわたって広く分布しています。
このチルー(チベットアンテロープ)は、2008年の北京オリンピックのマスコットイメージにも起用されている動物です。
このチルー(チベットアンテロープ)の毛でシャトゥーシュのショール1枚を作ろうとすると、300~600グラムのチルー(チベットアンテロープ)の毛が必要となり、これがチルー(チベットアンテロープ)3~5頭の毛が必要となるとゆえんといわれています。
しかし問題がこれだけだったらなぜ問題になるのか分からないように思えます。
チルー(チベットアンテロープ)をカシミヤ山羊のように飼育すればよいだけだからです。
しかしこのチルー(チベットアンテロープ)の生息場所はチベット高原を中心に,インドの北部の秘境と言われる場所です。
なおかつ、その場所は政治的にも国境の係争地帯と呼ばれているため孤立した地域ということから、チルー(チベットアンテロープ)の詳しい生態や生息数はほとんどわからない状態です。
さらに昔から、チルー(チベットアンテロープ)の肉は味がよいということで人間に狩られ、非常に臆病で用心深い動物となりました。
その上、そのチルー(チベットアンテロープ)の毛が非常に上質であることが分かっていため、1980年代後半から1990年代にかけて横行した密猟によって激減し、20世紀初頭には約100万頭いたチルー(チベットアンテロープ)が、1990年代後半には推定個体数は75,000頭以下となったといわれています。
そのため1975年にはCITES(ワシントン条約)の付属書Ⅱに記載され,その後1979年に付属書Ⅰへと移されており,またIUCN(国際自然保護連盟)レッドリストのEN(絶滅危惧ⅠB類)に指定されるなど,国際的な保護の対象となったのです。
このシャトゥーシュが「リングショール」とも呼ばれ、指輪を通すほど薄くて軽いのに、最高に暖かい高級ストールといわれました。
シャトゥーシュは現在、お土産など海外旅行先で購入したものも持ち込み禁止となり、規制を知らないで購入しても罪に問われるものです。
ですからパシュミナ=リングショールということは間違いということになります。
パシュミナはリングショール?
しかし上の画像をみていただくと分かるのですが、本物の手織りのパシュミナはリングに通ります。
非常に柔らかく、しかも細い毛を使用しているので、リングショールといっても過言ではないのです。
ですから正確にいうと、今ではパシュミナ=リングショールではありませんが、リングを通るパシュミナは存在し、それはカシミール地方の手織りパシュミナであるということになります。
画像で見抜く、本物のパシュミナの7つの見分け方
本物のパシュミナの詳しい見分け方に関しては、失敗しない! 本物の100%カシミヤ/パシュミナ製品 16の見分け方をご覧いただければ詳しく分かると思います。
失敗しない! 本物の100%カシミヤ/パシュミナ製品 16の見分け方は、パシュミナのお好きな上級者の方が確実に見分けらえるようなコツを書いています。
しかしこのコンテンツでは簡単に、画像やWEBなどで見分けることができる、本物の(カシミール産手織り)パシュミナの見分け方をお伝えしたいと思います。
ぜひ参考にしてくださいね。
でもお気を付けください。
本当に確実なのは本物の(カシミール産手織り)パシュミナを触ることですし、確かな知識を持ち、信頼できるお店から購入することです。
参考程度にしてください。
①商品タグをみる
これは日本で購入する場合の基本です。
海外でお土産として購入する場合の見分け方は失敗しない! 本物の100%カシミヤ/パシュミナ製品 16の見分け方を参考にしてくださいね。
まず原産地・素材表記をみます。
その中にインド・カシミヤ100%と書いてあれば、本物の(カシミール産手織り)パシュミナの可能性が高くなります。
カシミールの手織りパシュミナは100%カシミヤの糸を織って作っています。
シルクやメリノウールなどは混ぜていません。
しかし原産国がネパールなどほかの国。
または素材表記がパシュミナなどの記載、さらにカシミヤ90%、シルク10%などという記載があったら疑ってください。
パシュミナで使用している糸は非常に細いものです。
ですから手織りではなく、機械で効率的にカシミヤ山羊の毛を繊維にしていこうとすると、その毛が高価なうえに、非常に弱い獣毛なので機械にかけると糸が切れてしまいます。
生産者側からみると高価な糸で製造効率が上がらないと儲けが下がりますよね。
ですからカシミヤ糸の補強の意味でも昔からシルクと混紡されてきました。
そのためネパールなどで多くの地域で販売されているパシュミナの多くがシルク混のパシュミナなんです。
②織り方をみる
ご購入されようとしているパシュミナの織り方なら画像でも見れますよね。
その画像でもある程度見分けられます。
本物の(カシミール産手織り)パシュミナは手織りです。
ですから織りにある程度密度などにムラがあります。
さらにソリッドカラー(単色)の場合ですが、本物の(カシミール産手織り)パシュミナの多くは朱子織(ダイヤモンド織)です。
しかしソリッドカラー(単色)のオーダーがあった場合は5‐10枚ごとに綾織り(TWILL)でも織ったりもします。
ですからソリッドカラー(単色)のパシュミナをご希望の場合は、ほぼ朱子織(ダイヤモンド織)、たまに綾織り(TWILL)と思っていただくとほぼ正解です。
しかしご希望のパシュミナが、ボーダーやチェックなどのデザインパシュミナだと少し話が違ってきます。
弊社のブランドクールパシュミナ(CoolPashmina)などは、その朱子織(ダイヤモンド織)や綾織り(TWILL)などがデザインによって混在しています。
ですからまずソリッドカラー(単色)を探しておられる方なら、織り方が朱子織(ダイヤモンド織)または綾織り(TWILL)かを画像上で確認します。
もしその理由などが知りたい方がいらっしゃいましたら、お気軽に弊社に電話または店舗までご来店くださいね。
アドバイスさせていただきます。
③フリンジをみる!
本物の(カシミール産手織り)パシュミナを画像でも見分けるもう一つのポイントはフリンジです。
フリンジがある方が、上等なパシュミナだと勘違いしてしまいますが、実は本物の(カシミール産手織り)パシュミナのほとんどは断ち切りです。
ほとんどと書いたのがミソです。
カニ織や刺繍パシュミナなどであえて縦糸を長くし、クルリとまとめてフリンジのように見せることがありますが、少なくてもソリッドカラー(単色)のパシュミナは断ち切りだと思っていただいても構いません。
なぜなら本物の(カシミール産手織り)パシュミナは後染めの場合、幅だけ70-100mmか決めたのち、一度に10メートル以上織っていきます。
その後2mごとに織りあがった生地を切っていきますので、自然と断ち切りになります。
その際に刺繍が予定されており、フリンジをつけようと思ったら、フリンジ分少し長く織ります。
そして断ち切っていき、両端の横糸を抜き、縦糸のみにして、フリンジに見えるように糸を細く手作業で撚っていきます。
カニ織の場合は、一枚づつ仕上げていくのでフリンジが付けやすいのはそれが理由です。
しかしそのフリンジの形状も縦糸をフリンジに見えるように撚った形状、つまり上記のフリンジと同じとなります。
ですから毛糸の織物などでフリンジを付けていくには、あとからフリンジ用の糸を編み終わりの始末(編み止め)に引っ掛けていくようにつけていくと思います。
そうするにはパシュミナに編み止めがなければなりません。
しかし上記に書いたように本物の(カシミール産手織り)パシュミナは長く織って、切っていくので編み止めをしません。
ですからフリンジがないということになります。
④獣毛鑑定検査済製品を購入する
カシミヤ製品は獣毛なので、その繊維の成分を調べることが可能です。
日本にはそれができる機関がいくつかありますが、GreatArtisan(グレートアーティザン)では、一般財団法人 ケケン試験認証センターで獣毛の成分を調べ、鑑定書をいただいています。
他にもそのような検査をしている公共機関がありますので、そのような公共機関にて獣毛検査をしている会社やWEBサイトからカシミヤ/パシュミナ製品を購入することをお勧めします。
実はこの検査機関の記録結果から、品質のよいカシミヤ/パシュミナなのかも見分けることができるんですよ。
それは、その検査記録の証明書を確認するということです。
またその検査証明書も検査した獣毛の繊度(直径)も調査できます。
ぜひその繊度(直径)を調べ、検査表として公表しているカシミヤ/パシュミナをお選びください。
公表できないということは、できない事情があるということになります。
カシミヤ/パシュミナの品質ランクに関しては、カシミヤ/パシュミナには、なぜ高い製品と安い製品があるの?をご覧ください。
※ちなみにGreat Artisan(グレートアーティザン)ではすべて公表しています。
⑤常識的な価格かどうかを考える
近年「SDGs」という言葉をよく見聞きするようになりました。
それはアパレル業界でも同様です。
「SDGs」を通して社会貢献していこうとする機運が高まっています。
その中でアパレル業界が貢献できるのは、適正価格での商品の買取です。
そうしないとその商品に関係する人々の生活・労働環境、ひいては環境問題さえ解決していかないからです。
その観点から非常に安くて、品質良い本物の(カシミール産手織り)パシュミナがあるならば、誰でもそれを買いたいと思います。
しかしそれが常識離れした価格の場合、それはどうやって作られているのでしょうか。
恐らく非常に劣悪な環境の元、人々を働かせている会社から購入しているか、品質を著しく落としている会社か、さらには品質を偽っている会社以外にはないと思います。
なぜなら本物の(カシミール産手織り)パシュミナの購入ルートは本場のインドでも限られています。
ですから高価な価格で売買されており、そもそもカシミヤ糸の価格は高価になるからです。
さらに手織りの場合は人件費もかかっています。
ぜひカシミヤ/パシュミナの安い製品があったならば、本当に本物の(カシミール産手織り)パシュミナなのか。
確認してください。
最近はメルカリで本物の(カシミール産手織り)パシュミナと名乗って販売しているものをみました。
商品の品質などを確認できない、メルカリで販売している人もパシュミナのことをよく知らないで販売している、そんな人が仲介するインドのバイヤーから購入する。
そのインドのバイヤーに素材表記などを確認できず購入する・・・
なにかあっても誰も責任が取れない・・・
とてもリスキーだなぁとみて感じたとこです。
購入された方が満足されているのであれば、それが一番良いのですが・・・
皆様は決して価格に飛びついて、偽物を掴まされないようにしてくださいね。
⑥本物の(カシミール産手織り)パシュミナには太い毛が入っている
本物の(カシミール産手織り)パシュミナには多かれ少なかれ、太いカシミヤ山羊の刺し毛(外側の毛)が入ります。
カシミールのパシュミナはカシミールのラダックで育てられたカシミヤ山羊の内毛を使っています。
そしてジャンム―&カシミール地方のラダックのカシミヤ山羊の原毛の多くはスリナガルに運ばれ洗浄されます。
その後なんども洗浄され、いくつかの過程を通り、糸に紡績され、織機にかけられ織られるのです。
このラダックのカシミヤ山羊の内毛は、カシミヤ山羊の体全体から刈られています。
ですから洗浄の前にある程度分別しますが、カシミヤの元となる内毛だけではなく、太めの外毛も若干混じってしまうのです。
ですから本物の手織りのカシミヤ/パシュミナには、必ず太い毛が入ります。
それが本物の(カシミール産手織り)パシュミナストール,ショールが欲しい方には見抜く基準にもなります。
※注意※ 最近では精巧な偽物(いわゆるセミパシュミナ)には意図的に黒毛が混入されている場合もあるようなので、これだけに頼らず複合的に見て判別することが必要です。
⑦あえて購入前にお店に質問をする
わたしは購入前にあえてお店の方に質問することをおススメいたします。
たとえば織り方はもちろん、糸の細さや鑑定書の保有、さらにはパシュミナに関する知識などです。
また自分の体験、気持ちを伝え、それをくみ取ってくれそうか。
カシミールからの仕入れ苦労話や現地の話なども伺ってみても勉強になるかもしれません。
それを勉強がてらメールまたは電話などで聞いてみるのはいかがでしょうか。
そしてその対応などの受け答えでかなりの程度、そのお店の信頼性は見えてくると思います。
お客様からのご質問に答えるのに、いやがるお店などないと思いますよ。
ぜひお試しください!
本物のパシュミナと7つの見分け方 - まとめ –
本物のパシュミナの肌ざわりのよさを知ってしまうと、もはや他の繊維をまとえないほどその心地よさは抜群です。
GreatArtisan(グレートアーティザン)のすべてのスタッフもスリナガルのパートナーも、日本の多くの人に本物の(カシミール産手織り)パシュミナのよさを味わっていただきたいと思っています。
今はインターネットでさまざまな情報が手に入る一方、その情報が正しいのか否か、わたしたちは見分ける知恵を持たなければなりません。
その知恵はいつの時代も変わりません。
やはりその人の人間力と熱意で身につきます。
ぜひ本物の(カシミール産手織り)パシュミナを見分けてご購入し、至福のひと時を味わってください。
もしその助けにGreatArtisan(グレートアーティザン)がなれたのならとても嬉しいです。
またもし助けが必要でしたら店舗にお越しいただくか、電話メールなどでご質問ください。
喜んで手助けしたいと思います。
手で織ると自然に繊維の間に空気が入り、その分ふわふわ感が増します。職人がトイレに行ったり、食事をしたり、寝たりしたときにはわずかな筋がつきます。
手織りのパシュミナの場合は、色の違う遊び毛も多いのですが、肌ざわりにはほとんど影響しません。遊び毛を抜いてしまうと隙間も出来てしまうので、できるだけ抜かないようにおすすめしています。
超敏感肌の方には手織りのパシュミナが一番おススメです。最高の肌ざわりの商品はやはり価格も高くなってしまいますが、それだけのことはあります。