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プロだから知っている ネパールとカシミールのパシュミナの違い

プロだから知っている ネパールとカシミールのパシュミナの違い

Contents

ネパールとカシミールのパシュミナの違いとは

冬が色濃くなってくるとカシミヤ/パシュミナに関する声がいたるところから聞こえてきます。

その声の中に『ネパールとカシミールのパシュミナにはどんな違いがあるの?』という声もありますし、実際に質問されることがあります。

たしかに国・地域名を除けば同じ『パシュミナ』
ネットやアパレルショップをみれば、ネパール産や中国産のものが数多く並んでいます。
しかもネパールや中国のパシュミナは安い!

しかしカシミヤそもそもの語源はカシミールから来ていることはご存知の方は多いはず、
カシミールのパシュミナの方が本物ぽく思えるけど・・・・
どんな違いがあるんだろう。

もしかしたら、このような思いがあり、わたくしたちに質問されるのかもしれません。

このコンテンツでは、そんな疑問にお答えし、ネパールとカシミールのパシュミナの違いについて特集してみたいと思います。

ただ書いてあることはわたしのネットワークの中で知ったこと、経験したことです。
ですからこの情報を参考にしていただければ幸いです。

ネパールのパシュミナとは

ネパールのチャングラ パシュミナとは

パシュミナ
Chyangra Pashminaのロゴ

ネパールでは、ネパール政府とネパールパシュミナ協会がパシュミナを啓蒙し、ネパールのパシュミナの付加価値を高めるため、ネパール政府公認素材として『チャングラ パシュミナ Chyangra Pashmina』というブランドを作りその普及を図っています。

これはこの協会の会員となり一定の基準を満たせば、その『チャングラ パシュミナ』というロゴを使え、恐らく2016年より始めました。

タイミングが良いことに、丁度そのときわたしはカシミール周りでネパールに4日間滞在し、ネパールで最大手の糸屋さんの社長と会い、そこで『チャングラ パシュミナ』の説明を聞くことができました。
そしてその方が4月末プロモーションで日本に来日したので、さらにお会いしてこの『チャングラ パシュミナ』に関してさらに詳しく実情などをお伺いすることができたのです。

時間を少し遡ってネパールでは、事前に数十社を超える会社とメールや電話でコンタクトを取り、現地の友人などの意見を聞き、絞り込んだ後に実際にネパールのパシュミナ製造企業を5社、問屋を5社、通訳と共に周り様々な情報を集め、最終的にネパールでドイツ向けにパシュミナを製造している会社とだけ取引を始めました。
この会社は昔からの友人ということもあり、非常によい品質のパシュミナを今でも安く提供してくれています。

そしてこのコンテンツの情報は2016年時点でのネパールの情報だというのが前提となります。

ネパールのパシュミナの特徴

ネパールのパシュミナ
ネパールのパシュミナ工場

ネパールのパシュミナには大きく分けて2つの側面があります。

一つは国内向けのパシュミナ。
これには国内で流通するパシュミナが含まれますので、お土産屋さんなどで売っているパシュミナも含まれます。

もう一つは国外向けに製造しているパシュミナです。

右の写真のパシュミナ製造工場は主にヨーロッパに輸出している会社の工場です。

これらのパシュミナは国内には流通せず、もっぱら海外で販売されています。
それはある大手メーカーの下請けであったり、海外ショップ向けに販売していたり、自分が海外にブランドを立ち上げお店を持って販売している場合もあります。
ちなみに当社が取引しているのは、自分でブランドを立ち上げている会社です。
このブランドの社長さんが長男でドイツにおり、そしてネパールの工場長が次男でこの次男とわたしは友人です。

話題は戻りますが、ほとんどの場合(例外もありますが)ネパールのパシュミナメーカーはこのように2分されています。
(実はある大手メーカーの下請け工場から同等の品質のパシュミナを比ゆ的な裏口から購入することもできますが、これは例外と考えてください)

そしてネパールのパシュミナの品質も、大きくわけてこの販売ルートに従って2分されるのです。
つまり国内で流通しているパシュミナの多くは偽物だと思えば安全です。
(これはパシュミナ=カシミヤという観点でという意味です。パシュミナをただの軽くて薄い巻物という認識ではありません。)

パシュミナという名のもとに、素材がウールであったり、ウールがかなりの程度混じっていたり、ビスコート(レーヨンの一種)が混じっていたりします。
これらのものはプロが触れば分かるのですが、素人だとカシミヤに間違えてしまうこともあります。
ですからネパール国内で流通しているか否かを確認するのは、そのメーカー又は販売店と取引する上で一つの目安にはなります。

次に後者の国外向けにパシュミナを販売しているメーカーの商品は、カシミヤ=パシュミナとほぼ考えても良いですし、会社を選べばしっかりとしたモノづくりをしている会社もあります。
ネパールで比較的多い言い方ですが、使用している糸によってAランク・Bランクと、彼ら曰糸の太さによってランクを分けているといっていました。

しかしこのような会社でも偽物はあります。
たとえばケケン試験認証センターで検査をしたらカシミヤ100%と言いながら、70%だったということが実際にありました。
彼らがAランクと言っているカシミヤ100%のパシュミナで生じたことです。
ここの会社とは取引はしませんでした。

ですから海外向けに販売しているネパールのパシュミナメーカーも実際に工場に行ったり、日本の検査機関で定期的に調査したり、あの手この手を使わないと偽物を掴まされるのがネパールのパシュミナの実態です。
やはり貧しさゆえなのか、残念なことにネパールではこのようなことが生じます。

またネパールのパシュミナの特徴として、手織りと言いながら半機械化されているという点もあります。
画像をみていただければわかるのですが、横糸は機械で左右に動かしています。
そのためほとんどが機械化されていると言っても過言ではありません。
ですから手織りと言いながら織り上がった目は均一です。

これもネパールのパシュミナの特徴です。

カシミールのパシュミナとは

手織り
カシミールの手織り職人

カシミールのパシュミナは記録として残っているのは西暦13世紀、インドのカシミールがシャーミール王朝の支配下にあったときにパシュミナという織物が産業として体系化されたと言われています。

※その詳細な情報にご興味のある方は当社コンテンツカシミールの歴史 紀元後~パシュミナとの出会いまで|カシミールを想うをご覧ください。

しかしカシミールに古来からあるカシミールが誇る世界でも有数の織物、カニ織の伝来から考えると恐らくもう少し前ではないかと考えることもできます。

※その詳細な情報にご興味のある方は当社コンテンツカニ織の発祥とその危機|失われそうなカシミールの芸術(KANI Weaving)をご覧ください。

いずれにしても、カシミールのパシュミナは『パシュミナ』の発祥の地として世界でも知られているのです。

ではカシミールのパシュミナは現在どのようなものなのでしょうか。

わたし自身何度もカシミールのスリナガルに行っていますが、多少の変更はありますが、彼らは古来より伝わる技術そのまま現在でもパシュミナを作っています。
その作り方は、カシミールの手織り(Hand-Woven) |カシミヤ/パシュミナに詳しく記載しています。

古来より伝わるカシミヤ糸の紡ぎ方、織り方をベースとして製作し、その生地に素晴らしい刺繍など施します。

もちろん、織物だけでも素晴らしデザインを今もなお手織りで作っているのです。

それだけではありません。
彼らは自分たちの伝統に、そしてパシュミナ作りにプライドを持っているがゆえ、現代的な技術を取り入れる所は取り入れ、しかしカシミールのパシュミナのアイデンティを崩さずに現代にいたっているのです。

それがゆえ、カシミールのパシュミナは今でも世界の多くの人たちに愛されています。

とりわけ欧州のイギリスやフランスの文化を受けた国々にはカシミールのパシュミナファンが数多くおり、カシミールのパシュミナを巻くことが一種のステータスでもあるのです。
その証拠に世界のセレブたちは、様ざまデザインのカシミールのパシュミナを巻き、公の場や個人的なファッションに取り入れているのがカメラマンによって撮影されているのです。

ですからカシミールのパシュミナは唯一無二のパシュミナとして、今もなお世界で認められている織物なのです。

残念ながらカシミールにもネパールのように偽物のパシュミナを販売している人たちはいます。
メリノウールなどの糸を使い、機械織で作ったものを『カニ織』『手織りパシュミナ』として販売している人もいます。

しかしそれによってカシミールのパシュミナの価値が落ちていることはありません。
今もなおカシミールのパシュミナは高いステータスを保っているのです。

なぜならば多くのカシミールの人たちは自分のパシュミナにプライドを持っており、偽物や粗悪品はあれど多くのカシミールのパシュミナはカシミヤ山羊の毛を使っているものがほとんどだからです。

またカシミールのパシュミナは、メリノウール製だと明らかにしている場合も多く、ネパールのようなまがい物が蔓延している状況ではないからです。

しかし残念なことに本当か嘘か分かりませんが、ワシントン条約で禁止されているシャトゥーシュの織物を堂々とSNSやWEB、現地で売っている人もいます。
カシミールのパシュミナを愛する人たちにとって、その人たちの道徳観念は本当に残念なことです。

ある時わたしのビジネスパートナーに「シャトゥーシュの織物を持っているか?」と尋ねたことがあります。
彼は即座に『ない』と答えました。
そしてわたしは『カシミールで売っている人がいる』と名前をあげて伝えたら、『確かにいる。しかしあれは法律違反だ。自分は法律に違反することはしない』と強い口調で言われました。
彼に対するわたしの信頼が増したことは間違いありません。

カシミールのパシュミナを作っている人には、このような真面目に自分たちのパシュミナに取り組み、愛し、プライドを持っている人が数多くいるのです。

ネパールのパシュミナとカシミールのパシュミナの決定的な違いとは

カシミヤ洗浄工場

前述したように国民性とまでは言いません。
しかし自分たちのパシュミナに対するプライドを持ち続けている人がカシミールの方が多いという違いはあります。
またネパールの手織りパシュミナの多くは、純粋な手織りパシュミナではありません。
横糸は機械で通している会社がほとんどだということも考えました。

その中でもネパールのパシュミナとカシミールのパシュミナの大きな違いがあります。

これは品質以前の問題ですが、ネパールで言うところのチャングラー山羊(カシミヤ山羊)の毛を洗って綺麗に洗浄する工場設備が2016年当時ネパールにはありませんでした。
正確に言うならば、世界に流通できる品質で洗浄ができる洗浄工場がネパールにはないというのが正しい表現かもしれません。
今は分かりませんが、2016年当時はありませんでした。

そのためネパールの最大手の糸屋さんからチャングラ パシュミナ、つまりネパールで採取されたチャングラ山羊の毛をネパール国内で糸にしたものを貰ったのですが、チャングラ山羊の皮質やゴミなどが十分に取れておらず、彼曰く『この糸は商品に使えない』との事だったのです。
たしかにチャングラ山羊の糸はゴミだらけでした。

では彼らは2016年当時どうしようとしていたかというと、チャングラ山羊の毛を中国の紡績工場に持って行って糸にし、それをネパールに持って帰るか、それとも今まで通り中国やモンゴルの糸を使うかという選択を迫られていたのです。

当然その当時はチャングラ山羊の毛を中国に持って行って洗浄し、紡績したとしても価格が非常に高くなるので、彼らはネパールのチャングラ山羊の毛を使わず、今まで通り中国やモンゴルのカシミヤ山羊の毛を使っていました。
わたしのネパールの友人はそれに加え、ロロピアーナとも取引をしカシミヤ製品を作っていたのです。

つまりネパールのパシュミナの糸のほとんどは海外製だったのです。
そしてネパールの織機は、手織りと言いながらあれはほとんど機械織りだと思います。
そのため織りの目も詰まっています。
このように機械にかけられるというだけでもカシミールのパシュミナとはカシミヤ糸に大きな違いがあると感じました。

またネパールの人たちが『チャングラ パシュミナ』を立ち上げた目的は一つ、ネパールのパシュミナの信用回復です。

逆にいうとこのように『チャングラ パシュミナ』をいうものを作って、ネパールのパシュミナ業界を根底から覆さないといけないほど、ネパールのパシュミナ業界には偽物が蔓延っているということになります。
ネパールという国がそのような根底から覆るような改革が短い期間でできる訳がないと思っています。
それができるならば今のように、未だに首都カトマンズでさえ、かなり地震の痕跡が残っているという状態にはなっていないはずです。
それらが分かり、わたしはネパールとの取引を徐々に狭めていったのです。

あれから3年経った今は、ネパールのパシュミナも大きく変化していると信じたい気持ちはありますが、彼らの気質、ネパールという国の国民性などを考えるとそう大きな変化は望めないような気がします。

これがわたしの知っている3年前のネパールのパシュミナです。

【まとめ】ネパールとカシミールのパシュミナの違い

いかがでしょうか。
ネパールのパシュミナとカシミールのパシュミナ。
同じパシュミナでも細かく調べてみたらかなりの違いがあります。

ではどっちのパシュミナが優れているのでしょうか。
バイヤーという立場から考えると好みだと思います。
目の詰まったデパートで売っているようなパシュミナがお好きな方はネパールのパシュミナで満足できると思います。
しかしデパートで売っているようなパシュミナで満足できない方は、間違いなくカシミールのパシュミナに魅力を感じるでしょう。

ですからバイヤーという立場から言わせてもらえれば好みです。

ではわたしが個人という立場でネパールのパシュミナとカシミールのパシュミナがあったときにどちらを選ぶかというと・・・・
間違いなくわたしはカシミールのパシュミナです。

なぜかと言いますと、ネパールのパシュミナにはネパールのパシュミナじゃなければならない理由が見つからないからです。

もう少し分かりやすく書きますとネパールのパシュミナは前述したようにどこのデパートでも売っているようなパシュミナです。
ですから触っても見ても中国産だかネパール産だか分かりません。
品質も織り方もデザインも、巻き心地もそう変わりません。
だったらどうやって選ぶかと言うと、価格です。
同じ品質だったら、同じようなパシュミナだったら価格が安い方を選ぶのが心情というものです。

しかしカシミールのパシュミナはほとんどが手織りのため、一枚一枚に個性があり違いがあります。
まさにカシミールのパシュミナは一期一会のパシュミナと言えるのです。
※カシミールのパシュミナが一期一会と言える詳細な理由はカシミールのカシミヤ/パシュミナとの一期一会をご覧ください。

また使用している糸もカシミールのパシュミナはラダック地方のカシミヤ山羊の毛を使っているので、世界ではほとんど流通していない特別なカシミヤ山羊の毛です。
しかもカシミヤ糸の直径(繊度)も繊維長の長さも世界トップクラスです。
それだけでも価値があります。

さらにカシミールのパシュミナは、ナポレオンの妻ジョセフィーヌが愛し、ヨーロッパ社交界を魅了したパシュミナの作り方そのままを受け継いで作られており、そのような古来からの伝統と現代デザインを融合させたような素晴らしいデザインのパシュミナを今もなお作っています。
※カシミールのパシュミナ作りの方法は、カシミールの手織り(Hand-Woven) |カシミヤ/パシュミナをご覧ください。

確かにカシミールにもネパールのようにパシュミナの偽物を作って売っているような人もいます。
またシャトゥーシュというワシントン条約で保護するべき動物と定められたショールを堂々と売っている人もいます。
本物かウソか分かりませんが・・・・

しかしカシミールのパシュミナは本物のパシュミナを探すのはネパールより容易です。
カシミールのスリナガルに行けば間違いなく本物のパシュミナが見つかります。

そして多くのカシミールの人たちは約700年以上の歴史を持つ自分たちのパシュミナを愛し、プライドを持っています。
ですから作られたカシミールのパシュミナも素晴らしい商品となっています。

やはりこのようなことを知っていますので、わたしが個人的な選択をするのであればカシミールのパシュミナを選ぶのです。

Great Artisan(グレートアーティザン)はネパールのパシュミナとカシミールのパシュミナの両方扱っています。
ぜひなにか不明点などがあったら何でも聞いてください。

以下にGreat Artisan(グレートアーティザン)のブランドをご紹介いたします。

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