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ラピスラズリとはなんですか?
日本で人気のある天然石の一つにラピスラズリがあります。
なぜ人気なのか・・・なかなか分かりませんが、もしかしたら、日本人の好きな藍色に色が似ているからでしょうか。
とにかくラピスラズリは日本で人気のある天然石の一つです。
ラピスラズリとはなんでしょうか。
ラピスラズリとは和名で瑠璃(るり)と呼ばれている青い半貴石のことです。
※貴石と半貴石の違いは誰も教えてくれない! 天然石と宝石 何がどのように違うの?をご覧ください。
このラピスラズリという名称は、ラテン語で「石」を意味するラピスと、ペルシャ語で「青」を意味するラズリが合わさった名前で、ラピスラズリの美しい色そのものが名前になっています。
ちなみにペルシャ語のラズリは、アラビア語のラズワルド(lazward)が語源となって、そちらもやはり群青の空を表す言葉です。
さらにラピスラズリは、中世ヨーロッパでも愛され、ウルトラマリンという名前で呼ばれた頃もあります。
まさにヨーロッパの人たちには、美しいエーゲ海の海を連想させる色だったのかもしれません。
このようにラピスラズリとは、エジプトやメソポタミアなどの文明において古くから珍重された青い石で、古代から現代にいたるまで世界各地で愛されてきた天然石のことです。
ラピスラズリの美しい青はどのようにできているの?
ラピスラズリの美しい青色は、『藍色』を好む日本人の心を捕らえるといわれています。
このラピスラズリの美しい青色はどのようにできているのでしょうか。
ラピスラズリの主成分はラズライト(青金石)で、他にソーダ石、アズライト(藍銅鉱)、パイライト(黄鉄鉱)などの鉱石が混じって、ラピスラズリはできています。
そしてラピスラズリの魅力的な青色は主にラズライトによるものです。
ラピスラズリをよく見るとただ群青色というわけではありません。
ラピスラズリには群青色一色の石や、金箔のようなキラキラした金色の模様(パイライト)のあるもの、緑っぽいものまでさまざまな種類があります。
え?緑のラピスラズリがあるんですか?という質問がありそうですが、ラピスラズリに混ざっているバイライトが多いと緑がかって見えるのです。
このようなラピスラズリの色の違いは、採掘場所などによって原石に含まれる鉱物の成分量が違うから生じます。
かつてローマの博物学者プリニウスがラピスラズリのことを「星のきらめく天空の破片」と呼んだと伝えられています。
あたかも天空の破片のように、ラピスラズリの中に星のように浮かんで見える金色の斑点は黄鉄鉱です。
ローマの博物学者プリニウスは、このラピスラズリの深みのある藍色が、満天の夜空に星がちりばめられたようだと表現しました。
まさにラピスラズリの美しい青を的確に表現した言葉です
このようにラピスラズリは自然が長い時間をかけて生み出した、一つとして同じものがない天然石として大変魅力のある天然石となっています。
ラピスラズリにはどのような歴史がありますか?
ラピスラズリは最も古くから装飾品や宗教的な儀式を行うための道具として利用されてきた鉱物の一つです。
やはり人間は人智で説明できないものを発見した時に、それを神の仕業と考えるのは現代においても変わりません。
人は何か人智の及ばない力に頼りたいものです。
この日本でもただの天然石を「パワーストーン」と呼んでいるのも同じ考えだと思われます。
ラピスラズリはどのように広まり、人類史に登場したのでしょうか。
ラピスラズリの鉱山が発見されたのは一説に紀元前4000年頃と言われています。
ラピスラズリの産地はヒンドゥークシュ山脈の一年の半ばを雪に閉ざされた山岳地帯です。
このヒンドゥークシュ山脈とは主にアフガニスタン国内を北東から南西に1200kmにわたって延びる山脈であり、一部はパキスタン西部にも広がっています。
ヒンドゥークシュはペルシャ語で「インド人殺し」を意味します。
ですからヒンドゥークシュ山脈はわざわざ好んで分け入る行楽地でもなければ、人が住みたいと願う場所でもありません。
そんな場所でラピスラズリを見つけたのは、よほどの事情がある人か、はたまた未知の金属鉱石を求める鉱山師なのかもしれません。
いずれにしてもラピスラズリはその頃発見され、ラピスラズリは紀元前3000年頃までにエジプトに伝わり、その後2000年以上の長きにわたって、王家の装束や墳墓の副葬品に用いられたのです。
そしてメソポタミアでは、紀元前2500年頃の古代遺跡にラピスラズリの装身具が見られます。
このようにラピスラズリの最初はアフガニスタンで採掘されたようです。
そしてそのアフガニスタンのバダフシャーン州(Badakhshan)サリー・サン(Sar-i Sang)では、数千年前からラピスラズリが採掘されており、そのサリー・サン鉱山は現在でもラピスラズリの産出量が世界で一番多いといわれています。
話は戻りますが、アフガニスタンのバダフシャーンで採掘されたラピスラズリは西へ、イラン高原からスーサを越えてメソポタミア方面へ運ばれていきました。
その途上にある現在のイランにあるシャフリ・ソフタ遺跡には、ラピスラズリの原石を装飾品に加工するための道具が発掘されていて、バダフシャーンから運ばれてきたラピスラズリがここで加工されさらに西へ運ばれていったことが分かっています。
そしてラピスラズリが運ばれていったメソポタミアの、紀元前2500年頃の古代都市国家ウル(現在はイラク)の遺跡で、ラピスラズリを使ったネックレスや、ラピスラズリとカーネリアンを使用した頭飾りなどが発見されています。
その当時のウルは非常に栄えた都市でした。
遺跡などをみると、下水道なども配備されていたほどの都市だったのです。
さらにラピスラズリは西に広がって行きます。
ラピスラズリはさらにシナイ半島を超えてエジプトにも運ばれました。
ラピスラズリを加工したジュエリーは、古代エジプトのナカダ遺跡(西暦前3300年 – 3100年)で発見されています。
またツタンカーメン王(西暦前1341から1323頃)の墓から発掘された黄金のマスクや副葬品の中にあるブレスレットや胸飾りにラピスラズリが用いられています。
さらにラピスラズリはエジプトの装飾品の他にも、円柱に彫刻を施した円筒印章を作るためにも用いられました。
これは、ラピスラズリがそれほど硬くない鉱物で彫刻が比較的簡単であったためです。
円筒印章は、粘土の上にこの円柱を転がすことで所有の印や、物に封をする役割を果たしていました。
この日本でも、このラピスラズリでハンコを作っているお店を見たことがあります。
現代でも古代でも人間のやることには変化がないようですね。
日本に伝わったラピスラズリと中世の顔料
ラピスラズリの影響はこれだけではすみませんでした。
ラピスラズリは後にシルクロードを通って日本へも運ばれてきたのです。
その中の一つは、奈良の正倉院に保管されている装飾品(紺玉の帯)があります。
ラピスラズリは日本では「瑠璃」と呼ばれ、仏教の七宝(金・銀・瑠璃・玻璃・硨磲・珊瑚・瑪瑙)のひとつとされ、空海は瑠璃(ラピスラズリ)を守護石としていました。
瑠璃(ラピスラズリ)はたいへん希少価値のある石であったので、貴族の中でも特に高位の者、また天皇でなければ手にすることはできませんでした。
遠くアフガニスタンから運ばれてきたのであれば、そうでしょうね。
さらに中世になるとラピスラズリはヨーロッパに輸出されるようになりました。
紀元前4世紀、ラピスラズリはギリシャの人々に愛され、その後ローマ人の間でも広く愛された天然石となったのです。
紀元後5世紀になるとラピスラズリは違った形で広く使われるようになりました。
それはラピスラズリをすりつぶした粉末が、顔料ウルトラマリンとしてヨーロッパで使われ始めたのです。
このようにヨーロッパではラピスラズリを細かく粉砕して作られた顔料である「ウルトラマリン」が、フェルメールなどルネサンスやバロックの画家たちに用いられるようになりました。
時代を経ても、これらの絵の青はずっと脳裏に焼きつき、心を捉えて離さない美しい青です。
しかしこのラピスラズリを基にした顔料は非常に貴重だったので、大抵はキリストやその母マリアの着ているローブなど特別な絵にしか用いられませんでした。
上の写真のように、その多くは今でも教会や美術館で見ることができます。
中にはこのラピスラズリを基にした青い顔料を買う資金が足りず、絵を完成させられない画家もいたほどです。
なぜ高価だったのかというと、天然ウルトラマリンはラピスラズリからほんの2-3%しか作れなかったのです。
しかも最高級の濃い青はほんの少ししか滲出しないので、非常に貴重だったのです。
このラピスラズリの顔料は、1826年にJBギメがウルトラマンの合成品を発明するまで、たいへんな貴重なものとして扱われました。
天然のウルトラマリンの作り方
天然のウルトラマリンはどのように作るのでしょうか。
天然のウルトラマリンの作り方は、まずラピスラズリを粉砕したものを柔らかくした蝋、樹脂、油と混ぜ合わせ、その塊を布に包んで薄い灰汁の中でこねます。
この工程を繰り返すことで容器の底には青色の粒子が沈みます。
これが天然ウルトラマリンです。
このように天然ウルトラマリンは、ラピスラズリの鉱物の2-3%くらいしか粒子が取れなかったので、非常に貴重なものだったのです。
ラピスラズリの産地と特色
先ほども少し触れましたが、人類が最初にラピスラズリを採掘したバダフシャーン(アフガニスタン)のサリ・サング鉱山は、現在も世界で一番の産出量を誇っています。
数千年掘ったのにまだあるってどれだけラピスラズリを埋蔵しているのでしょう。
近年でラピスラズリはロシアやアメリカ、チリなどでも採取されています。
特にロシアのバイカル湖畔にはかなりの規模のラピスラズリの鉱脈があるといわれています。
はじめに書いたように、ラピスラズリは原石に含まれる鉱物の成分量によって、様々な表情をみせてくれます。
それで大まかにですが、ラピスラズリはその産地ごとに特徴があるのです。
簡単にそれぞれの地域の特徴をまとめてみます。
アフガニスタン産ラピスラズリ
アフガニスタンは品質は最高と言われています。
前述したように、とくにバダフシャーン州(Badakhshan)サリー・サン(Sar-i Sang)鉱山で採れるラピスラズリはラピスラズリの中でも最高品質とされています。
完全に群青色一色のラピスラズリはこの地方にしかありません。
しかしアフガニスタン国内であっても完全に群青色一色というのは少ないので、このバダフシャーン州(Badakhshan)サリー・サン(Sar-i Sang)鉱山のラピスラズリは大変貴重です。
ロシア産ラピスラズリ
ロシアのバイカル湖畔で採掘されるラピスラズリは、アフガニスタン産に比べると色が暗めで、パイライト(金色の模様)が含まれないものがほとんどです。
ロシアのラピスラズリには上の写真のような白いカルサイト(方解石)が多く入っていることがあり、このような石はグレードが落ちます。
チリ産ラピスラズリ
チリで採れるラピスラズリはバイライトを多く含んでおり緑がかったものも多くあります。
以前チリ産のラピスラズリは注目されていませんでした。
それはラピスラズリの算出量が少なかったからです。
しかし近年アルゼンチンとの国境付近にあるコキンボ地方に巨大なラピスラズリの鉱脈が見つかりました。
緑がかったラピスラズリは石の評価が下がってしまうことがありますが、バイライトが金のチップのようにバランスよく入っているものはコレクターに人気があります。
チリ産のラピスラズリには、そのようなラピスラズリが算出されるのでコレクターにも人気があるのです。
偽物のラピスラズリの種類と本物のラピスラズリの見分け方
ラピスラズリはかなりの量が出回っているので、それに交じってかなりの人工石も流通しています。
カシミヤ/パシュミナもそうですが、人気があればあるほどまがい物、偽物が数多く作られるようになるんですよね。
孫子はいいました。
敵を知り己を知れば百戦危うからず・・・
本物のラピスラズリを見分けるためには、どんな偽物があるのか知る必要があります。
まず偽物のラピスラズリにはどんなものがあるのでしょうか。
【ラピスラズリの偽物】ハウライト
ラピスラズリとして販売されている偽物の天然石の中には、ハウライトという白い石に人工的に着色したものが多くあります。
良心的なお店はハウライトラピスラズリとしてかなり低価格で売っています。
ハウライトは白で色が付きやすいので、ラピスラズリ以外にもターコイズ(これも人気がある)の人口石としても作られています。
なぜならばハウライト自体は白で非常に美しい天然石なのですが、表面が多孔質になっており、染まりやすいため、偽物天然石のベースとなってしまうのです。
ラピスラズリにこだわっているわけではなく、ラピスラズリの色が好きという方もいらっしゃいますので、ハウライトラピスラズリであることを明示しているのであれば、お安いので良いのではないでしょうか。
しかしそれを隠しているのであれば、それはラピスラズリの偽物といえます。
【ラピスラズリの偽物】張りラピスラズリ
一般的に張りと言われているラピスラズリもあります。
これは薄くスライスしたターコイズを他の素材と張り合わせてラピスラズリとして売っている偽物のラピスラズリです。
張り付けているのがターコイズなのにラピスラズリとは、ずいぶんですよね。
これらはもちろんラピスラズリではありません。
【ラピスラズリの偽物】練りラピスラズリ
その他に、宝石の業界ではよくある「練り」と呼ばれるものがあります。
これはラピスラズリの粉末を樹脂などで固めたもので、ラピスラズリは含まれていますが樹脂なので石としての価値はありません。
ハウライトに着色しているものは、ネイルリムーバーなどでこすれば色が落ちるのですぐ分かりますが、これは元がラピスラズリなので分かりません。
安いラピスラズリが欲しいと思われる方もいらっしゃるので、これも明示していれば良いと思うのですが、なかなか明示していない店が多いのも事実です。
店主が分からないのかもしれないですね。
本物のラピスラズリの見分け方
どうしたら本物のラピスラズリを見分けることができるのでしょうか。
大抵はラピスラズリの色や模様と価格とのバランスで判断することができます。
最も高く評価されるラピスラズリは『混じりけのない純粋な青』で、青一色のラピスラズリは大変高価です。
ですから真っ青なのに安いラピスラズリがあったらそれはほぼ間違いなく偽物だということです。
大抵は中央宝石研究所などの鑑定書が付いた高級品となります。
しかし色が濃い薄いという基準だけで判断することはできません。
なぜなら含まれる鉱物の成分量によって色味は変わってくるからです。
一般に金色のバイライト(黄鉄鉱)や白いカルサイト(方解石)が混じっているものは品質が劣るとされているので価格は安くなりますが、バイライトが星を散りばめたようにバランスよく入っているものは高価になる場合があります。
もしこうした「星のきらめく天空の破片」タイプで安価な場合は「練り」のラピスラズリである可能性があります。
薄くスライスしたターコイズなどの「張り合わせ」は大抵、薄い素材が張りやすい平らなデザインに使われています。
この場合継ぎ目が台座などで隠れていることも多いので、不自然な所がないか端から端までよく観察しましょう。
最後はやっぱり手でラピスラズリに触れてみることです。
ラピスラズリの本物は手にしたときに独特のヒンヤリした感触があるものです。
当店で仕入れているラピスラズリには色が薄いものも濃いものもありますが、まず最初に感じるのはこの冷たい感触と重さです。
やはり最後に信じられるのは、人間の目と手ですね!!
ラピスラズリのお手入れ方法
自分にぴったりのラピスラズリを手に入れたら、長く大切にしたいですよね。
ラピスラズリを扱う時にもっとも気を付けなくてはならないのは傷がつかないようにすることです。
ラピスラズリはモース硬度が5-5.5でガラスと同じくらいの硬さしかありません。
ですから宝石箱の中でダイヤモンドやルビーなど硬度の高いものとぶつかるとキズが付いたり割れてしまうことがあります。
モース硬度とは?
鉱物には硬さを表す基準としてモース硬度という10段階の基準があり、10段階の基本となる鉱物が決められています。
硬度というと割れにくい物を想像しますが、モース硬度は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」を表しています。
どのように測定するかというと、測定したい鉱物と基準となる鉱物をひっかき合わせ、傷の付き方によって石の硬さを測定します。
地球上の鉱物の中で一番硬いとされるダイヤモンドは硬度10です。
例えばルビーやサファイアはダイヤモンド以外の宝石に傷を付けられるので硬度9となります。
ちなみに人間の爪は2.5程度です。
またラピスラズリは高温で変色するので、直射日光が当たるところで保管しないように気を付けます。
ラピスラズリのブレスレットやネックレスが汗や皮脂で汚れたら、柔らかい布で汚れを拭き取り、時々優しくブラッシングして汚れを落としましょう。
ぜひお気に入りのラピスラズリをお手入れして、大切に使ってくださいね。
天空の破片 ラピスラズリ まとめ
年代を問わず身に着ける人を引き立ててくれる素敵な天然石、ラピスラズリ。
大昔の人も同じラピスラズリでおしゃれをしていたと思うと、なんだか不思議な気持ちになります。
ファッションの流行はあっという間に変わりますが、地球が生み出す本当に美しいものは何千年経っても魅力が変わらないところがすごいところですね。
Great Artisan(グレート アーティザン)で販売しているラピスラズリを紹介いたします。
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