無数の文化、習慣、宗教、人種に恵まれたインドは、本当に不思議な国であり、魅力的な国です。
まさに人種のるつぼとなっているインドには、魅力的な様ざまな文化があり、その文化を具現化した工芸品に溢れています。
そのような魅力的なインドの工芸品の1つにインド刺繍があります 。
インドの刺繍は、服、布、小物などさまざまな物に刺繍されますが、今回はそのインド刺繍とパシュミナとの関りに焦点を当てていきたいと思っています。
Contents
インドの刺繍文化とは
インドは古(いにしえ)の昔から、数え切れないほどの侵略と政権の交代によって様々な文化の影響を受け、それはインドの刺繍文化にも多くの影響を与えてきました。
そのような結果生み出されたインドの刺繍文化は、周辺諸国のあらゆる地域からの影響を受け、インド独特な風味やデザインを持つ刺繍文化へと発展していったのです。
インド刺繍はそのような成り立ちのため、一口にインドの刺繍といっても様々なものがあり、無数の刺繍スタイルを誇っています。
今回は、そのインド刺繍の中のチカン カリ(Chikan kari)と呼ばれているインド刺繍に焦点を当てていきたいと思っております。
このインド刺繍の中のチカン カリ(Chikan kari)に触れずに、カシミール刺繍を語るわけにはいかないからです。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍とはなんですか?
チカン カリ(Chikan kari)刺繍の中心地は、インドのウッタルプラデーシュ州のラクノー市です。
このラクノー市は、乾期には日中45度を超す猛暑の地方です。
ネパールと国境が面しているラクノー州は、多彩な民族と宗教、文化に恵まれている一方で、州人口は日本の人口を遥かに超える1億7千万という人がおり、その人口の内貧困ライン以下の生活者が約3割を占めるそんな州です。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍はそのような州、ラクノー州で生まれました。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍とは、このインド中北部のラクノー市で受け継がれたインド伝統の刺繍のことをチカン カリ(Chikan kari)刺繍といいます。
このチカン カリ(Chikan kari)という言葉は、文字通り刺繍を意味しています。
またチカン カリ(Chikan kari)刺繍は、シャドーワークという名前でも知られています。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍の特徴は、その刺繍の非常に細かい繊細さと、繊細な生地に強くエンボス加工されたステッチが特徴です。
写真のようにチカン カリ(Chikan kari)刺繍を施すのに、白い糸に加えて刺繍糸に黄色がかった絹(シルク)も使用されることがあります。
これはチカン(Chikan)とも呼ばれる、チカンカリ(Chikankari)刺繍の大きな特徴の一つともなっています。
写真のように白い生地に同系色の白い糸、そしてその生地に繊細で微細さのあるデザインを手刺繍で施すことにより、やわらかな凹凸が美しい模様を描き出すのがチカン カリ(Chikan kari)刺繍の特徴の一つです。
インドというとコントラストがハッキリしたデザインという印象を持つ方が多いのですが、チカン カリ(Chikan kari)刺繍は、刺繍の生地と同系色の糸を使うことで生まれる陰影がチカン カリ(Chikan kari)刺繍のデザインの醍醐味といえます。
ですからチカン カリ(Chikan kari)刺繍はシャドーワークとも呼ばれているのです。
何かレースの刺繍をイメージさせますね。
とても心惹かれるインドの手刺繍です。
このインド独特のデザイン、チカン カリ(Chikan kari)刺繍の作品は、主に衣服の装飾に使用される刺繍デザインでり、その他にもクッションカバー、ピローカバー、テーブルリネンなど幅広く広がっています。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍という言葉の発祥はなんですか?
このチカン カリ(Chikan kari)という言葉の発祥の意味にはさまざまな説があります。
ある伝承によると、チカン カリ(Chikan kari)という言葉は、ペルシャ語の「Chakin」または「Chakeen」から派生していると考えています。
つまり、生地に繊細な模様を作成することを意味しているということです。
チカン カリ(Chikan kari)に関する他の伝承によると、チカン カリ(Chikan kari)はChikeenやSiquinの歪んだバージョンという説もあります。
さらに別の伝承では、この用語は東ベンガル語に由来しており、その意味では「Chakeen」は罰金を意味するというものもあります。
いずれにしても、このチカン カリ(Chikan kari)刺繍は、非常に古い言葉でもあり、刺繍でもあるため、現在その名の由来ははっきりとは分からないというのが実情です。
しかしどんな意味であったとしても、変わらずいえるのはチカン カリ(Chikan kari)刺繍は、インド刺繍の財産ともいえる素晴らしい手刺繍であるということです。
チカン カリ(Chikan kari)の歴史
チカン カリ(Chikan kari)は、紀元前3世紀の早い時期に、すでにインドの文献でチカン カリ(Chikan kari)の技法で作られた刺繍への言及がされていることから、非常に古いインド刺繍であると考えられています。
ではチカン カリ(Chikan kari)刺繍はどれくらい古い刺繍であると考えられているのでしょうか。
インドでのチカン カリ(Chikan kari)刺繍の起源に関しては、さまざまな伝承があります。
例えば、インドのウッタルプラデーシュ州のラクノー市の村を通過していたある旅行者が立ち止まり、貧しい農民に水を求めたと言われています。
その旅行者は農民のおもてなしに喜んで、お礼として、貧しい農民の生活がこれ以上酷くならないよう、このチカン カリ(Chikan kari)刺繍の技術を教えたといわれています。
ですから現在でもウッタルプラデーシュ州のラクノー市は、チカンカリの刺繍として最も有名な場所です。
さらにもう1つの歴史上確認できるチカン カリ(Chikan kari)の起源の伝承は、ムガール帝国の皇帝ジェハンギル(Jehangir)の妻であるヌール・ジェハン(Noor Jahan)が17世紀にインドにペルシャの芸術を紹介したことに始まります。
ヌール・ジェハン(Noor Jahan)自身は非常に才能のある刺繍家で、ペルシャの芸術に特に好意的な想いを持っていました。
そして夫婦ともに、彼らはカシミールを愛し、カシミールの文化、カシミール刺繍やカシミールの織物を非常に愛したことで知られています。
そのムガール帝国の皇帝夫妻は、特にペルシャ建築に関心を寄せ、その広く開かれたデザインとコンクリートの格子スクリーンのデザインを布地に複製したいという願いが、チカン カリ(Chikan kari)刺繍を発展させたとも考えられています。
このチカン カリ(Chikan kari)刺繍はモスリンやオーガンジー等の白木綿に白糸で刺繍したのが始まりですが、現代では素材もさまざま、糸の色もカラフルになって、繊細で透明感のある仕上がり感がチカン カリ(Chikan kari)の魅力です。
ムガール帝国の崩壊後、このチカン カリ(Chikan kari)刺繍は、チカン カリ(Chikan kari)刺繍職人がインド中に散らばることによって、そのチカン カリ(Chikan kari)の技法がインド中に広がっていったといわれています。
それはインドの北の最果ての地区、カシミールにも伝わっています。
そしてカシミール刺繍の中のソズニ刺繍の中にジャアーリ(JALLI)刺繍というデザインで現代に伝わっています。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍のプロセス
チカン カリ(Chikan kari)刺繍は、約40種類のステッチで構成されていますが、現在ではそのうち約30ステッチと糸の太さの違いで様々なパターンが使われています。
そのチカン カリ(Chikan kari)の作品で使用されている基本的なステッチは以下の3つといわれています。
この中でGreatArtisan(グレートアーティザン)はカシミヤ/パシュミナに3番目のジャアリワーク(Jaali Work)がカシミールに伝わり、カシミール刺繍の一部となったジャアリ(Jaali)刺繍を施したストールを販売しております。
フラット ステッチ ( Flat Stitches ) | 生地にそのまま刺繍を施します。 |
---|---|
エンボス ワーク (Embossed Work) | 刺繍の外観が粒状の、エンボスのような印象を与えます |
ジャアリ ワーク (Jaali Work) | 刺繍はオープンメッシュまたは網のような形状のデザインです。 |
チカン カリ(Chikan kari)刺繍のデザイン
前述のとおり、チカン カリ(Chikan kari)刺繍はペルシャの影響を多大に受けており、チカン カリ(Chikan kari)刺繍の伝統的なイメージは、自然と風景に対する彼らの愛情を表しています。
特にラクノーのチカン カリ(Chikan kari)刺繍で使われる最も一般的なモチーフは、花とペイズリーを使い、自然の物語を刺繍で描きだします。
これらチカン カリ(Chikan kari)刺繍のデザインから私たちは、花、ペイズリー、草やつるのような自然物に対するインドの人々の大きな愛情を目の当たりにすることができます。
チカン カリ(Chikan kari)刺繍の制作過程
チカン カリ(Chikan kari)のテクニックは刺繍する前段階と後の段階の2つの部分に分けられます 。
刺繍前の作業
まずは刺繍を施すものを決定し、その後デザインを決定。
そしてその決まったデザインの木製のブロックスタンプを、刺繍を施すものに刻印します。
これらのスタンプは、ニールとサフェダの染料を使用して布地にデザインをブロック印刷するために使用されます。
ブロック押印後の作業
木製のブロックでスタンプした後から刺繍が行われます。
そこでは、生地が小さなフレームに部分的にセットされ、刺繍職人が押印されたインクのデザインに沿って刺繍を始めます。
使用されるステッチの種類は、その地域の特質やモチーフの種類とサイズによって異なります。
そして最後に刺繍し終わったショールを洗います。
これで刺繍パシュミナが完成です!
インドの刺繍 チカン カリ(Chikan kari) まとめ
インドの代表的な刺繍の一つ
チカン カリ(Chikan kari)刺繍に関してまとめてみました。
今回は色々な文献やWEBサイト、そして本などを調べたのですが体系だって書かれているものを発見できず、もしかしたら少し間違った情報が入っているかもしれません。
慎重に調べてはいますが、もしそのような間違いがあったら教えていただければ幸いです。
インドの刺繍文化は非常に魅力的です。
昔は職人一人一人の手刺繍によって、多くの時間をかけて刺繍が施されていましたが、現代では機械で刺繍を施すこともあるようです。
しかしその手刺繍と機械刺繍を比べてみると、違いは一目瞭然です。
やはり偉大な職人たちによって一枚一枚手で施された刺繍は、どこか温かみを感じ、ただの装飾品ではなく、芸術家による作品のようです。
ぜひインドの偉大な職人たちが施した刺繍を実際にご自分の目でお確かめください。
素晴らしい芸術作品となっています。
文中にも記載しましたが、GreatArtisan(グレートアーティザン)では、このチカン カリ(Chikan kari)刺繍の一つ、ジャリ(Jaali)を施したカシミヤ/パシュミナを2019年1月より販売します。
また2019年2月からは、カシミヤ/パシュミナに比べ、比較的に入手しやすい価格、メリノウールでこのチカン カリ(Chikan kari)刺繍のジャアリ(jaali)からカシミールに伝わったジャリ(Jali)刺繍を施したストールを販売いたします。
素晴らしい製品なので楽しみにしてください。
そしてぜひお手元に一枚お考えください。
またこのコンテンツを通じ、インドの刺繍に魅力を感じていただければとても嬉しく思います。
GreatArtisan(グレートアーティザン)では、インスタグラムに掲載しているようなジャリ刺繍のストールを販売しております。
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