今年のコロナウイルス(COVID-19)の世界的なパンデミックを通し、今後は安全安心が大切なキーワードになってきそうです。
その中でも食の安全が叫ばれて久しい状況ですが、わたしたちが身につけるもの、直接肌に触れる衣類にも安全安心を気にする方も多くなっています。
今回は、その衣類の安心安全を考えるときによく聞く、アゾフリー(特定芳族アミン)について特集をしてみたいと思います。
Contents
アゾフリーとはなんですか?
アゾフリーとはなんでしょうか?
アゾフリーとは、衣料品などに使っている染料に体に有害な染料を使用していませんという意味です。
このアゾというのはアゾ化合物の略で、繊維を染める染料にも一般的に使用されている染料です。
そしてフリーですから、使用していないということになります。
なぜアゾフリーをわざわざ宣言する必要があるのでしょうか。
ではまず、わたしたちの着用する衣類の染色について簡単にご説明します。
衣類の繊維の染色について
衣類には最初から色はついていません。
ですからその糸に色を付けて繊維にするか、繊維を衣類にしてから染めることにより衣類に色がつきます。
このように繊維に色を付けるために使われる染色ですが、どうやって色を付けているのでしょうか?
当たり前のことですが染料を使って、糸や繊維に染色を行っていきますが、
その染色の種類は大きく分けると2種類の染料があります。
それは天然染料と合成染料です。
最初に天然染料から考えてまいりましょう。
天然染料とはなんですか
天然染料とはその名の通り、自然界に存在する植物や動物、鉱物など天然の素材から作られる染料のことを天然染料といいます。
例えば、ある種のサボテンに寄生するエンジ虫(コチニールカイガラムシ)から抽出される着色料は、数千年前より染料として使用されています。
聖書などにも記載されており、有名なえんじむし緋色という色で呼ばれています。
また、写真のように藍、紅花などの植物由来の染料は日本人になじみのある色です。
これも自然に生えている植物由来の染料ですね。
ちなみに右の写真の藍染めは、タデ藍という植物の茎や葉を発酵させて作られた染料で、世界最古の染料と言われています。
日本人は、この藍色を好きな人は多いですよね・・・
天然染料は心惹かれる自然な感じの色を出します。
合成染料とはなんですか
合成染料とは石油や石炭などから人工的に作られた染料のことです。
合成染料が発明されたのは1856年頃ですが、合成染料は植物染料よりも大量にしかも安く安定して供給できることから、現在はほとんどの衣類を染めるのに合成染料が用いられています。
やはりできるだけ安く商品を作るためには、コストを抑えていく必要があるんですよね。
しかし安いものにはワナがあります。
この合成染料にはたくさんの種類があり、染色する繊維の種類に合った染料が使用されます。
その沢山ある合成染料の一つにアゾ染料(アゾ色素)という種類があります。
ようやくアゾという名称が出てきましたね。
このアゾ染料は染料としては一般的な染料で、7000種ほどある染料のうちアゾ染料は約4000種を占めています。
ちなみに、時々アゾ染料がすべて有害と書いているWEBサイトもありますが、そういう訳ではないんです。
確かにアゾ染料の中には有害なものがありますが、すべてのアゾ染料が有害なわけではありません。
正確にいうとアゾ染料すべてが有害なわけではなく、アゾ染料のうちの数%のみが有害なんです。
では数あるアゾ染料のうち、どのようなアゾ染料が有害なのでしょうか。
有害なアゾ染料とはなんですか
約4000種類あるアゾ染料のうち、有害はアゾ染料はどれくらいあるのでしょうか。
アゾ染料のうち、化学反応によって化学構造の変化が生じ、その結果発がん性のある物質に変わるおそれが疑われる物質を「特定芳香族アミン」といいます。
それは24種類あります。
この24種類の「特定芳香族アミン」を生成するアゾ染料が有害なのです。
ですから正確にいうと、アゾフリーとは染色に使用されている染料に「特定芳香族アミン」が基準値以下含まれていないことを指しています。
このアゾフリーの基準値はEUや日本においては、30μg/g(mg/kg)以下となっています。
つまりアゾフリーとは、人体に有害な発がん性のおそれが疑われる24種類の「特定芳香族アミン」を生成するアゾ染料を使用していない衣料のことをアゾフリーといいます。
この有害な物質、特定芳香族アミンを含むアゾ染料の使用が初めて禁止されたのはドイツで、1994年のことです。
日本においては最近まで特定芳香族アミンを規制する法律はありませんでした。
しかし2016年4月1日から法規制が開始されました。
どんな製品が対象なのでしょうか
特定芳香族アミンとは、アゾ染料の一部が皮膚の表面や腸内にある細菌、また肝臓などで還元分解されて生成される可能性がある物質のことです。
そしてその特定芳香族アミンが、人体に取り入れられると発がん性物質となる可能性があります。
そのため規制の対象となる製品は、皮膚と長時間接触する繊維製品となっています。
製品名を挙げると、おしめ、下着、手袋、帽子、ハンカチ、タオル類、マフラーなどがあります。
この特定芳香族アミンの害の実例はあります。
日本でも、実際に染料のもととなる化学物質の製造工場で働いていた方が膀胱がんを発症しました。
この工場では発がん性が指摘される特定芳香族アミン5種類を原料として扱っていて、従業員はこの液体を混ぜる仕事を担当していたのです。
従業員は防毒マスクを着用して作業をしていましたが、分子レベルの化学物質は作業着などを透過して皮膚から体内の細胞へと吸収されていたのです。
この例からも、わたしたちが普通に服を着ていて特定芳香族アミンによる健康被害が生じることはほぼないと言えますが、特定芳香族アミンが皮膚から吸収されることによって健康被害をもたらす化学物質であることがよく分かる例と言えます。
規制対象のアゾ染料が使用された衣類はどのくらいあるのか?
世界を見てみると、ほとんどの国でこのアゾフリーの規制対象の染料はもう市場には流通していません。
しかし、中国やインドなどではまれにこうした染料を使用した製品があり、日本に入ってくることもあります。
厚生労働省の行った国内実態調査では、インド製のランチョンマットから基準値を超える物質が確認されました。
ですから、アパレルメーカーに納品する製造業者や輸入業者は、有害なアゾ染料が使用されていないという「不使用宣言書」というものを提出することになっています。
特定芳香族アミンの試験は様々な検査機関が行っていますが、木の葉では「一般財団法人ボーケン品質評価機構」に検査を依頼しています。
左が、木の葉が直近で行った「アゾ色素由来の特定芳香族アミン試験試験」の報告書です。
アゾフリーまとめ
時々目にする「アゾフリー」の意味はお分かりいただけたでしょうか?
最近は「フェアトレード」「エシカル」など、環境にも人にも優しいということに少しづつ注目が集まっていますね。
木の葉が扱っているカシミヤ/パシュミナはもちろんアゾフリー。そしてカシミールの職人たちが昔から受け継いできた伝統の技術によって作られています。
是非その芸術的な作品をお楽しみください。