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口頭伝承|インド最古の捺染 カラムカリ
口頭伝承または口伝えの文化は、文字体系がない文明において、人から人もしくは世代を超えて情報伝達をしていく手段でした。
その一方として口頭伝承は芸能としての側面も存在し、文字体系が確立されてからも、廃れることがなく世界各地で行われているのです。
その伝承されてきたものは神話や歴史、そして文芸もしくは法など多岐に渡っていったのです。
その中で数多くの芸術も花開いていきました。
その中の一つがカラムカリ(Kalamkari)です。
カラムカリ(Kalamkari)とはなんですか?
カラムカリ(Kalamkari)とはインドの伝統的な芸術の一つで、布地に手描きまたはブロックプリントを施したものです。
カラムカリ(Kalamkari)はペンやブラシを意味する「カラム」という単語に由来しています。
ペルシャ語のqalam(ペン)とkari(職人技)を意味し、文字通りこのカラムカリ(Kalamkari)はペンを使った仕事を意味していします。
このカラムカリ(Kalamkari)は、インドで最古とも言える手捺染(ハンド・プリント)であるといえます。
インドにおいてカラムカリ(Kalamkari)は輝かしい歴史を誇る芸術と言われていますが、それは現代のイラン、ササン朝ペルシャの時代、紀元前3000年までさかのぼります。
そしてカラムカリ(Kalamkari)は、インドのアーンドラプラデーシュ州とテランガーナ州を起源とするカラムカリ(Kalamkari)の最初は、神殿の戦車と神々の偶像の背景を飾るために始まりました。
このカラムカリ(Kalamkari)は、アンドラ・プラデッシュ州の小さな地区で紀元前3000年頃に始まったものと言われていますが、カラムカリ(Kalamkari)の芸術性がインド全体で認められたのはムガール帝国の時代と言われています。
そしてゴルコンダ政権下で、この芸術はアンドラ・プラデッシュ州のクリシュナ地区のマチリパトナムで栄え、18世紀にはインドの英国人による衣服の装飾デザインとしてさらに発展したのです。
捺染(なっせん)とは?
捺染(なっせん)という言葉は耳慣れない言葉かもしれません。
しかしこの捺染(なっせん)を「プリント」と言い換えれば、わたしたちも容易に想像がつくかもしれません。
この捺染(なっせん)とは、染料を糊に溶かした色糊を使って布に模様を描いて、布に染料を固着した上で水洗いをし、出来上がった染色技法を指しています。
この捺染(なっせん)は単色の布に複数の色で模様を表現することができるため、世界各地で衣服を中心に使われてきた手法です。
これをインドではカラムカリ(Kalamkari)。日本では着物の友禅染めが捺染(なっせん)技術を使っているといわれます。
カラムカリの種類
カラムカリ(Kalamkari)は、スカリカラハスティとマチリパトナムという2つの独特なスタイルのカラカリアートがあります。
スリカラハスティの技法では、ラーマヤナ、マハーバーラタ、プラーナ、およびその他の叙事詩や伝承の場面を描いたヒンドゥー教の神話からインスピレーションを得ています。
このスリカラハスティの技法で作るカラムカリ(Kalamkari)は、寺院に起源があるため、強い宗教的なインスピレーションを持っています。
マチリパトナムスタイルでは、アーティストは彫刻が施された木製のブロックを使用し、その模様の複雑なディテールは手で描かれています。
そして染料は植物染料を使用し、壁掛け、衣類、シーツ、カーテン、サリーなどのパターンやモチーフを生地に印刷します。
前述したように、インドには体系立てて文章化された歴史書または文学書が少なく、何世紀も渡って民俗歌手や画家は、村から別の村へとさまよい、ヒンドゥー神話の物語を村の人々に伝えていました。
勿論その多くの方法が前述した口頭伝承だったのですが、それを捕捉する一つの方法としてカラムカリ(Kalamkari)に、多くの神話や歴史、そして文芸などが描かれており、現代でもそれが引き継がれているのです。
歴史家によると、カラムカリ(Kalamkari)アートを描いた布地の見本がインダス文明のモヘンジョダロの遺跡から見つかっています。
カラムカリ(Kalamkari)の製作工程
カラムカリの全プロセスは、漂白、洗浄、塗装、染色、澱粉処理の23の工程を踏んで作られます。
カラムカリに使用される綿生地は、牛の糞と漂白剤の溶液で処理されます。
生地をこの溶液に数時間置いた後、生地は均一なオフホワイトの色になり、これにより布地に天然染料を塗ったときにその染料がにじむのを防ぎます。
このように水洗いをした後、染めの際に色が滲むのを防ぐために、この綿の生地に牛のミルクとミロバランと呼ばれる植物から抽出された液体の混合液に浸し牛の臭みを取り除きます。
その後、牛の臭みを取るために生地は20回も水洗いされ、天日干しされます。
このように布地に絵を描く準備が整ったら、カラムカリ(Kalamkari)のアーティストは布地にモチーフやデザインを施し、それに合わせて天然の原料から染料を作ります。
そのカラムカリ(Kalamkari)のデザイン、モチーフは、ヒンズー教や植物をモチーフとし、絵付けには藍、マスタード、錆び、黒、緑のような素朴な色が主に使われています。
カラムカリ(Kalamkari)で使われている染料は、人工物質が使われることがなく、すべて天然染料が使われています。
カラムカリ(Kalamkari)とカシミールのカシミヤ
このカラムカリ(Kalamkari)の技法は、カシミールのカシミヤ/パシュミナにも使われています。
カラムカリ(Kalamkari)は主にサリーなどの布地を作る手法ですが、カシミールのカシミヤ/パシュミナでも作り方の前の手法に差はありますが、このカラムカリ(Kalamkari)という技法は使われています。
カシミヤ/パシュミナでは、無地のカシミヤ/パシュミナを作るところまでは他の刺繍パシュミナなどといっしょです。
それからがカラムカリ(Kalamkari)の技法を使い制作していきます。
カラムカリ(Kalamkari)デザインというと色使いが艶やかなデザインが思い浮かびます。
勿論カシミヤ/パシュミナのカラムカリ(Kalamkari)にも同じように色艶やかなデザインもありますが、シンプルなカラムカリ(Kalamkari)のデザインもあり、バリエーションに溢れています。
このようにカシミヤ/パシュミナには、通常のヨーロピアンデザインのようなデザインも含め、刺繍デザインやこのようなカラムカリ(Kalamkari)デザインもあり、非常にバリエーションに溢れています。
ぜひお手元にカシミールのカシミヤ/パシュミナをお持ちください。