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絣(かすり)とカシミールの関係とは
日本の織物の技法の一つに絣(かすり)という技法があるのをご存じでしょうか。
この日本の絣(かすり)という技術は30もの工程を経て織り上げられる素晴らしい織物と言われています。
この絣(かすり)で重要なのが「括る」・「染める」・「織る」という行為です。
これらを行うことによって、その過程でズレがでてきます。
このズレが擦れて見えるので、この日本では絣(かすり)と呼ばれるようになり、そして、このズレこそが「かすりの美しさ」と言えるのです 。
このように偉大な職人たちの熟練の技術と自然の擦れが加わり生じ、日本的な「美しいかすり」が生まれるのです。
しかしこの日本でも有名な絣(かすり)という技術が、カシミールにも伝わっており、そのカシミールの手織り技術の中で生かされ、カシミヤ/パシュミナの中で息づいていると知ったならば驚く人もいるのではないでしょうか。
今回は、日本で言う所の絣(かすり)とカシミールのカシミヤ/パシュミナについて特集してみたいと思います。
絣(かすり)とはイカット(ikat)とはなんですか?
日本で言う絣(かすり)のことをカシミールでは「イカット(ikat)」と呼んでいます。
これはカシミール独自の呼び方ではありません。
この絣(かすり)という用語は日本の織物の一技術を指す言葉なのですが、この絣(かすり)に類似した技術は東南アジアをはじめとして世界各地に存在しています。
それらの織物はカシミールと同じように「イカット(ikat)」と呼ばれています。
これはマレー語 – インドネシア語の「mengikat」から派生したもので、「つなぐ」という意味です。
この単語は、本来は「tenun ikat (tenunは織物の意)」と呼ばれています。
つまり日本で言う絣(かすり)とは、世界では「イカット(ikat)」と呼ばれているのです。
ですからこのコンテンツでは今後、世界の呼び名でもあり、カシミールでの呼び名でもある「イカット(ikat)」に統一させていただきたいと思います。
このイカット(ikat)という織物ですが、これは前もって部分的に染め分けた糸を使って織った織物の総称のことです。
もう少し詳しくイカット(ikat)について書きますと、糸を図柄に従って括り、染液がその部分に浸透しないように防染します。
つまり一本の糸の中に、染めている部分と染めていない部分を「括る」ことによって意図的に作るのです。
そしてその糸を織機にかけ織っていくと防染した部分が絣(かすり)の模様となって現れる織物のことを意味しています。
このイカット(ikat)という織物の技術は、スペイン、オランダ、アジア、ラテンアメリカ、ヨーロッパの一部で実践されています。
いや、正確に言うならば、このイカット(ikat)という織物の技術は世界中の約30カ国以上、とくにインドや東南アジアのインドネシア諸島などで今もなお盛んに行われている織物の技術なのです。
イカット(ikat)の起源はどこですか?
このイカット(ikat)という織物の技術の正確な起源を特定することは非常に困難です。
なぜならイカット(ikat)という織物の技術の歴史は非常に古く、その起源に関してもその古さゆえに諸説あり、実のところよく分かっていないのが現状です。
このようにイカット(ikat)という織物の技術の起源に関して、はっきりしたことは分かっておりませんが、このイカット(ikat)という織物の技術は、古代インドに発祥したという説が有力とされています。
なぜならインドのマハラーシュートラ州北部にあるアジャンタ石窟寺院のアジャンタ石窟に画かれた壁画にこのイカット(ikat)の腰巻の織物を着た人物が描かれているからです。
このアジャンタ石窟寺院が作られたのは前期と後期に分けられて作られたと考えられており、前期は西暦前1世紀から西暦2世紀。後期は西暦6世紀半ばくらいまでに築かれていたと考えられています。
ですからこのことは、遅くてもイカット(ikat)という織物の技術は7世紀までにはインドに存在し確立されていた織物の技術という一つの証拠となっているからです。
そしてこのイカット(ikat)という織物の技術には、2つの織り方があります。
それはシングルイカット(ikat)とダブルイカット(ikat)の2種類です。
シングルイカット(ikat)とは、縦糸と横糸のどちらか一方のみを結束し、異なる色で染色してイカット(ikat)デザインを作成する方法です。
これは数多くの国で行われています。
ダブルイカット(ikat)とは、縦糸と横糸の両方を結束し染色されるので、この技術は非常に難しくその製作工程は複雑かつ壮大になり、その織物の非常に高価になります。
そしてこのダブルイカット(ikat)という織物の技術は、インド、日本、インドネシアの3カ国でのみ行われています。
このダブルイカット(ikat) という技術を使いサリーを織ると、1つのサリーを織るのに7〜9ヶ月かかることがあるそうです。
そしてインド国内では、このダブルイカット技術は、アンドラプラデシュ州とグジャラート州パタン州のNalgonda地区で行われている織物が最も有名です。
とくにインドのグジャラート州のパタンという村のダブルイカット(ikat)で作られた織物が有名で、この村では、12世紀から伝わるパトラ織(イカット(ikat)織り)の職人たちの末裔が、伝統のダブルイカット(ikat)の技術を使い、織物(ここではサリー)を織っているとのことです。
とくにこの村のダブルイカット(ikat)のパトラ織は、イカット(ikat)織の中でも世界最高の技術を要する職人技といわれ、非常に高い評価を受けています。
このパトラ織は、17世紀頃からオランダ東インド会社の輸出品として、当時、オランダが宗主国として支配していたインドネシアにもたらされ、渡来の貴重品として王族・貴族のステイタス・シンボルとされていました。
そして、そのパトラ織の華麗な花文様がインドネシアの人々の憧れの的となり、その花文様を模倣したイカット(ikat)が広く東南アジアに広がったと言われています。
このようにグジャラート州のパタンという村のイカット(ikat)の一番の取引先はインドネシアだったそうで、ここでも現代につながっているイカット(ikat)のつながりが感じられます。
ちなみにカシミールではイカット(ikat)織は、カニ織(KANI Weaving)とチェック・ストライプデザインのカシミヤ/パシュミナで見ており、今年の秋より販売いたします。
そして今後、カシミールのカシミヤ/パシュミナのイカット(ikat)織りに関する追加の調査を行っていきたいと思います。
イカット(ikat)という織物はどのような評価ですか?
前述しましたが、イカット(ikat)という織物の特徴は、何といっても「かすれ」です。
このイカット(ikat)のデザインを見て、日本では絣(かすり)と呼ばれているほどです。
このイカット(ikat)という織物は、非常に多くの色の糸を使うため、複雑なデザインとなるため、織物の技術としてもより高度で難しいため、高価になりがちです。
また、このイカット(ikat) の特徴である「かすれ」は、テキスタイルコレクターによって高く評価されています。
その証拠として、かつてこのイカット(ikat)デザインの織物は、シルクロードでは通貨としても使われていたのです。
またこのイカット(ikat) デザインが世界中に広がっていることからでも、このイカット(ikat)という織物が高く評価されていたことが分かるのではないでしょうか。
イカット(ikat)デザインは、ヨーロッパでは中央アジア・中近東を抜けてフランス・ドイツ・イタリア・スイスでも多く織られています。
特にフランスでこのイカット(ikat)デザインは、シネと呼ばれ16世紀から盛んに織られるようになり、ルイ15世・ナポレオンの時代に宮廷衣装などに多く用いられているのです。
これらの事実もこのイカット(ikat)という織物の技術が世界中で高く評価されていることの表れということができるのです。
カシミールとイカット(ikat)の繋がり まとめ
このイカット(ikat)デザインに関する高い評価は、カシミールのカシミヤ/パシュミナにおいても同様です。
カシミールではこのイカット(ikat)織の技術をKANI織りやチェック・ストライプカシミヤ/パシュミナデザインで使用しています。
カシミールのカシミヤ/パシュミナは手織りであり、しかも非常に細いカシミヤ糸を使っているので、非常に柔らかく・軽く・何とも言えない素晴らしい風合いが特長です。
それにイカット(ikat)=絣(かすり)の技術を使うことにより、パッと見はイカット(ikat)特有のデザインの「かすれ」ゆえに固さやゴワゴワ感を感じるかもしれませんが、いざ触ってみると極上の柔らかさと軽さ、そして素晴らしい風合いが感じられ、素晴らしいカシミヤ/パシュミナとなっています。
またこのイカット(ikat)の技術を巧みに使って織ることにより、カシミールのカシミヤ/パシュミナで日本人の好きなトラ柄デザインも実現し、贅沢な肌触りの中にワイルドさも加えることができています。
ぜひカシミールのカシミヤ/パシュミナで織られたイカット(ikat)デザインをお楽しみください。
以下にGreat Artisan(グレート アーティザン)のカシミールのイカット(ikat)=絣(かすり)デザインのカシミヤ/パシュミナをご紹介いたします。
カシミールのイカット(ikat)=絣(かすり)デザインのカシミヤ/パシュミナはクール パシュミナとトラディショナル パシュミナブランドで発売されています。